高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

雷桜

 

雷桜 (角川文庫)

雷桜 (角川文庫)

 

今日の関東はめちゃめちゃ寒いが、ここのところすっかり春仕様の記事ばかり投稿しているので、今日もむりやり押しきる。

が、たまには本のご紹介でもしてみようと思う。まぁ、いつものようにものすごく以前の作品ではあるが。

 

雷桜(らいおう)」

この作品に関しては、役者の蒼井優さんの存在を語らないわけにはいかない。

そもそも、この作品を知った切っ掛けが彼女にある。

たまたま本屋で立ち読みしていた雑誌で、彼女の記事が載っていた。

で、彼女が春に読みたい好きな作品として「雷桜」を挙げていたのだ。「いつか映画化されるなら自分が出演したい」とかなんとか、そんなようなことをおっしゃっていた。

 

蒼井優さんのことはあまり詳しく存じあげなかったのだが、それでも印象的な役者さんである、との認識はあった。

 

で、気になって読んでみた。

 

面白かった。

 

で、数年後、本当に映画化され、そして彼女はヒロインとして出演していた。

 

雷桜 スタンダード・エディション [DVD]

雷桜 スタンダード・エディション [DVD]

 

 

なかなか感慨深いものがあった。 

 

 

サテ、作品そのものは格調高い時代ものといった感じだ。

Wikipediaに日本版「ロミオとジュリエット」との言葉があったが、言い得て妙というか、分かりやすい説明だと思う。

 

まぁ、野生育ちの少女と家柄のよろしい当主との身分違いの恋愛もの…雑にいうならそんな感じだ。

ただ、この手の「全世界共通型ラブストーリィ」というのは、けっきょくのところスタンダードとして残るだけの魅力があるからこそ繰り返される物語だ。作者の魅力と力量は、それ以外のところで語られるべきだろう。

 

なにしろ描写がうつくしい。言葉のひとつひとつのセンスがいい。まるで映像を見ているかのように文章が読める。映画化されたのもうなずけるし、映画化された「絵」を見ても、ほとんどの方が違和感を抱くことはなかっただろう。それぐらい、明確に作者の意図する「絵」が読者に伝わっていたということだと思う。

 

かといって、堅苦しくて読みづらいなんてこともない。すらすらと読めてしまう。

 

これこそが本来の言葉の在り方であり、正しい文章とはこういうモノなんだな、と思わせる作品である。今でもたまに読み返すことがある。これからの季節にぴったりの作品なので、少し早めだがご紹介しておく。