雷桜
- 作者: 宇江佐真理
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2004/02/25
- メディア: 文庫
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今日の関東はめちゃめちゃ寒いが、ここのところすっかり春仕様の記事ばかり投稿しているので、今日もむりやり押しきる。
が、たまには本のご紹介でもしてみようと思う。まぁ、いつものようにものすごく以前の作品ではあるが。
「雷桜(らいおう)」
この作品に関しては、役者の蒼井優さんの存在を語らないわけにはいかない。
そもそも、この作品を知った切っ掛けが彼女にある。
たまたま本屋で立ち読みしていた雑誌で、彼女の記事が載っていた。
で、彼女が春に読みたい好きな作品として「雷桜」を挙げていたのだ。「いつか映画化されるなら自分が出演したい」とかなんとか、そんなようなことをおっしゃっていた。
蒼井優さんのことはあまり詳しく存じあげなかったのだが、それでも印象的な役者さんである、との認識はあった。
で、気になって読んでみた。
面白かった。
で、数年後、本当に映画化され、そして彼女はヒロインとして出演していた。
なかなか感慨深いものがあった。
サテ、作品そのものは格調高い時代ものといった感じだ。
Wikipediaに日本版「ロミオとジュリエット」との言葉があったが、言い得て妙というか、分かりやすい説明だと思う。
まぁ、野生育ちの少女と家柄のよろしい当主との身分違いの恋愛もの…雑にいうならそんな感じだ。
ただ、この手の「全世界共通型ラブストーリィ」というのは、けっきょくのところスタンダードとして残るだけの魅力があるからこそ繰り返される物語だ。作者の魅力と力量は、それ以外のところで語られるべきだろう。
なにしろ描写がうつくしい。言葉のひとつひとつのセンスがいい。まるで映像を見ているかのように文章が読める。映画化されたのもうなずけるし、映画化された「絵」を見ても、ほとんどの方が違和感を抱くことはなかっただろう。それぐらい、明確に作者の意図する「絵」が読者に伝わっていたということだと思う。
かといって、堅苦しくて読みづらいなんてこともない。すらすらと読めてしまう。
これこそが本来の言葉の在り方であり、正しい文章とはこういうモノなんだな、と思わせる作品である。今でもたまに読み返すことがある。これからの季節にぴったりの作品なので、少し早めだがご紹介しておく。