高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

思い出のブラックバード

むかしむかし、サントリーウイスキー、「ホワイト」のCMソングにもなった。

マイルス・デイヴィスのバイ・バイ・ブラックバード

個人的にはあまりマイルスは好きではないが、この曲、というかこの時期までのマイルスは好きだ。そして、なにしろそのCMが最高に好きだった。

 

というわけで、今日はスタンダード、ブラックバードについて。

 

CMは人形を使ってのものだった。ちょっと細かい作りまでは覚えてないのだが、たぶんクレイアニメーションのような撮影方法だったと思う。設定はアパートの一室。白い壁とダークブラウンのフローリングの床。シンプルな部屋だ。オレンジ色の夕陽が射し込んでいる。飼い主の男性と猫がテーブルに向かい合って座っている。男性は女性にフラれたばかりなのか、ちょっと切なげな表情。それを慰めるような表情で見ていた猫がひと声。男性は猫にむかって軽く肩を竦めると、手もとのウイスキーを掲げてみせる。

 

 

サントリー ホワイト 640ML 1本

サントリー ホワイト 640ML 1本

 

 

細かい作りまで覚えてないとか言いながら、細かく覚えている。

 

 

もうね、コレたぶん20年ぐらいは前のCMだよ。ここまで文章に起こせるぐらいに記憶している時点で、私がどれだけこのCMが好きだったかが分かると思う。なにしろYouTubeで検索しても見つからないぐらい古い。それでも覚えているのだ。

 

 


Miles Davis - Bye Bye Blackbird

 

で、このCMのバックで流れていたのが、マイルスのバイ・バイ・ブラックバードだ。当時はまだジャズにあまり詳しくなかったので、最初はそれが誰のなんて曲かも分からなかった。でも、調べてすぐにCDを買いに行った。

 

なんだろう、まだひとり暮らしをしたことのないオトコが憧れるすべてが、そのCMにはあったように思う。

 

…大袈裟だな。

 

しかし、女性にフラれてしまうところも含めて、「オトナ」をイメージさせるには充分だった。それを飼い猫が慰めてくれるというのも、なにか夢があった。

CDを買ったその足で、私はウイスキー、ホワイトも買った。で、水割りなんてしないでロックで呑む。猫がいなかったのは残念だったが、部屋でなんとなくCM場面を再現している気分になったりもした。もちろん、わざわざフラれたりはしていないが…。

 

 

ちなみに歌詞の意味としては、なかなか解釈が難しいのだが、色町に堕ちた女性の視点で、客の男性(ブラックバード)に密かに想いを寄せてはいるものの報われず、この場所に愛はない、だから故郷の家に帰るとかなんとか、そんなことを歌っている。はず。

 

ジャズのスタンダードは演奏する人間の性別によって解釈というか、立場が逆転したりする。しかし、まぁこの曲に関してはたぶん、男性が演奏してもそのまま女性視点で、という立場を変えることはないのだと思うけど…

 

なにはともあれ、細かいことは抜きにして、この曲のマイルスのトランペットは最高だ。いわゆる「たまごの上を歩くような」と呼ばれたデリケートな音色は、心地よくもあるし、切なくもある。

 

というわけで、今日はスタンダードソングではあるが、マイルスの一択、という感じでご紹介してみた。

 

 

それでは、バイバイ。