キチンと対等なピアノとヴォーカル
サテ、ときどきの音楽ネタ。
ということで、気が向いたら投稿している、ちょっとだけマイナーな感じの、でも硬派ジャズマニアの方々からは鼻で笑われそうな(?)、デュオアルバムの紹介。
はい、そのうち硬派なオジサマたちも唸らせるアルバムも紹介したいとは思うものの、ワタシは日々そんなに堅苦しく生きてはおらず、どちらかといえば脱力しまくっているので、穏やかで優しい音楽に惹かれるのだよ。
ということで、今日はピアノとヴォーカルのデュオ。
サラ・ガザレクは2006年ぐらいだったかにデビューした女性ヴォーカリスト。
当時から透明感のあるナチュラルな歌声が人気だった。
ノラ・ジョーンズ以降ウヨウヨ湧いて出た、ちょっとフォーキーでツマラナイ(失礼)オリジナルを歌う女性ヴォーカリストの中では、珍しくまっとうに生き残っている。
ただ個人的な意見だと、彼女がここまでやってこれたのは、組んだミュージシャンが凄かった、というのも大きな要因だと思っている。
たしかにキレイな声だし聴いていて心地いいのだが、アルバムを通して強く印象に残るのは、演奏陣のアレンジだったり美しいフレーズだったりする。
今回のアルバムに関しても、全体を支えているのはピアニストのジョシュ・ネルソン。
コヤツの演奏がスバラシイ。
もともとサラのアルバムではデビュー作からずっとピアニスト兼ミュージカル・ディレクターとして参加している彼の、その自由自在なピアノ。
本来ジャズは自由な音楽であるにもかかわらず、あくまでもジャズという括りの中で自由を標榜するミュージシャン、逆に革新的な自由を求めるがゆえにジャズという括りを無理に避けて通るミュージシャン、どちらも結局のところジャズを意識するあまり実際はあまり自由ではない。という連中が大勢いる中で、ジョシュ・ネルソンはまったくもって自由。なんてことを思わせるピアノ。
音が美しい。自由奔放に流れるようなフレーズも美しい。
うん、ソロ・アルバムでも良いんじゃないのか…なんて言ってはイケナイ。
サラ・ガザレクだって頑張ってはいるんだから。
ホラね、頑張ってる。
まぁ、なんだかんだで相性のいいふたりなんでしょう。
考えてみれば、ヴォーカルが参加する編成でのジャズは、いつだって演奏陣が欲求不満。極端に短いソロ、ヘタをすればソロとも呼べないぐらいの短い間奏…聴衆は誰もが歌のみを渇望している、とでも勘違いしているプロデューサーのいかに多いことか。
ホント、もっと巷の声に耳を傾けた方がいい。
その点、このふたりは対等。そしてアルバムのプロデューサーは大御所アル・シュミット。さすが、分かってらっしゃる。
そう、けっきょくのところ私、このアルバム大好き。
ふたりともアメリカ生まれ(シアトルと南カルフォルニア)のミュージシャンにしてはヨーロッパ寄りの感性。冬の曇り空が似合う。それでいて、夏にはひんやりとした清涼感も与えてくれる。日本でそこそこ売れているのも分かる気がする。