雨のお話
降り始めの雨のにおいが好きだ。
なんて、めっちゃ冷たい雨が降り始めたばかりの夕方に、思いきり夢見がちなオトメみたいなことを書いちまったが、
あれが「ペトリコール」なる名前で呼ばれていることや、乾いた地面や植物の油、埃などが主成分みたいなモノであることや、だいぶ現象そのものが科学的に解明されちまっている、なんてことを知った上で、
もういちど言う。
降り始めの雨のにおいが好きだ。
単純なハナシだ。
現象や状況はどうでもいい。
「エアロゾル」やら「ペトリコール」やら、科学的にどうこうもカンケーない。
ただ単に、あのにおいが好きなのだ。
よって雨の中の散歩も、降り始めに限定するなら好きだ。
可能ならば普通に散歩している時に雨が降り始め、どこかで雨宿りとかしながらあの独特なにおいを楽しみたい。楽しんだら、さっさと雨にはあがってもらいたい。ついでに雨が止んで、空に虹とか出てきたら…おっと、また夢見るオトメになっちまいそうだ。
雨はキホン嫌われモノだ。
濡れるし、つめたいし、汚れるし。
傘ジャマだし、髪の毛クルクルになるし。
それでも、雨とは仲よくしておいた方がいい。
とりあえず空気はキレイにしてくれる。
うまくすればクルマだってキレイにしてくれる。
もっとうまくすれば、消し去りたい過去とかも洗い流して…
おっと。これ以上は、やめておこう。
それはともかくとして、やっぱり雨が降ってくれないと、あの独特なにおいを楽しめない。だから、雨が降ってもあまり文句は言わず、少しぐらいは感謝してやってもいい。
なんてことを少しぐらいは思っている。
- 作者: ヴィルヘルムゲナツィーノ,Wilhelm Genazino,鈴木仁子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/06/01
- メディア: 単行本
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と、ここまでフツーに書き進めていたのだが、いきなり思い出した本がある。
その名も、「そんな日の雨傘に」。
自分でもまさかの展開だが、とりあえず進めてみよう。
内容としては、
46歳、無職、つい最近、彼女に捨てられた…という、なにやら居たたまれない設定だが、主人公の軽妙な語り口が絶妙で、いいバランスを保っている。
無職の彼が手に入れた新しい仕事(バイト?)は、新作の靴を履いてその感想をレポートすること。で、そのために街をぶらぶらと歩き続ける…この発想がすでに天才的だが、彼はそこで見ること聞くこと、あらゆるものに反応して、どうでもいいようなことをつらつらと思い出し続ける…これがもう、なんというかホント、珍妙で楽しい。
そしてこれは誰もが抱く感想だと思うのだが、この主人公はどこか自分と似ている。なんて思ったりもする。
私だけだったら逆に困るのでこの部分については賛同してくれる方がタクサンいることを願う。
さっきまでその存在すら完全に忘れ去っていたが、思えばオススメの本ベスト10ぐらいには入るであろう傑作だ。
それに、内容も好きだがなんといっても表紙の写真がスバラシイ!
こんな写真を撮ってみたい!
思えば近所の図書館で借りること6回。いいかげん買えよ、とか自分でも思うのだが、もはや図書館とは自分の本棚のことナリ、とか思っているので、すでに所有している気になっていた。さすがにいいかげん買おうと思う。
…なんてことを書きながらふと自分の机を見ておどろいた。
なにやら見覚えのある本が…
おぉ、すでにワタシ、持ってるじゃないか!!
いやはや、買ったことすら忘れ去っていた。