穏やかな秋の夜に
むかし、友人のライブ演奏を聴きにちっぽけなカフェに入った。カフェといっても夜はバーとしても営業しているような店だ。ライブも夜にあった。スタッフは店長と思われるオジサンがひとり。
さて。
私が入店した際、店内には友人の姿のみ。
店長は厨房にいた。
まだほかのお客さんはきていなかったが、すでに開店時間は30分以上すぎている。
忙しいのかな…?
料理の下準備とかもあるだろうから別に席の案内とかがなくてもそこまで不快に思うことはなかった。厨房と店のフロアは繋がっていて、店長は私の姿を認めているはずだが、いらっしゃいの言葉もない。それでもまぁライブでお客さんが沢山きたら困るだろうし、頑張って準備してるんだろう、きっと。
というぐらいで、私はとりあえず友人とおしゃべりしたりで時間を潰していた。
やがて、ほかのお客さんもチラホラ。
それでも店長は厨房から出てこない。
皆どうしていいか分からず、とりあえず友人と言葉を交わす。
とはいえ私はあとからいらっしゃったお客さんとは面識もなかったので、とりあえずテキトーに席に着きつつビールでも注文しようかな、と店長に声をかけた。「あの、ビールお願いします!」
すると店長、厨房から顔もあげず、
「ビールの、なに?」
ビールの、なに?…???
一瞬とまどったが、すぐに数種類のビールを用意できる店なのだと理解する。
で、「何があるんですか?」と、私。
「メニューに載ってる」と店長。
「メニュー、どこにあるんですか?」と私。
「そのへん」と店長。
あきれた。なんだコイツ?
すでに充分に不快ではあったが、テーブルからそれらしきラミネート加工されたメニュー表を引っ張り出す。メニュー表を見ないと分からないぐらいビールの種類が沢山あるのだろうと、できるだけポジティブに考えつつ、リストを探す。
あった。
【ビール】
ドライ
ギネス
「・・・」
これだけ?
おいおいおい、それならフツーに言葉で伝えられるじゃん。せめて、ほかに隠しメニューとかないの?
なんて思ったりもしたが、メニューを見ろと店長が言っている以上、隠しメニューなどあるはずもない。たとえあったとしてもその場所は教えてくれないだろう。なんだ、この店?
かなり呆れながらも、私はギネスを注文した。
ギネスが私のもとに届けられたのはそれから10分以上も経ってからのことだった…
そんなむかしの出来事を、ふと思い出してしまった。
別に理由なんてない。
ただ、時どき「あの店はひどかったなぁ」と思い出すのだ。
それぐらい、衝撃的な出来事だった。
これまでも料理が美味しくないお店や入口で10分近く待ちぼうけをくらったお店等、ダメなお店はそれなりにあったのだが、やはりその時の店がダントツだ。
あんな店、まだ残ってるのかなぁ…?
フツーなら潰れるけど、あんな店にかぎってしぶとく残ってたりするんだよなぁ…たしか、あの時のライブも秋の穏やかな夜にあったんだよなぁ…
と、穏やかな秋の1日の終わりに、ふとそんなことを思い出した。
来週には、さいたまでもGo To Eat絡みのスペシャルクーポンとかもスタートする(正確には2回目の販売とのこと)。
皆さまがキミョーなお店に出会わないことを祈る。
それではお疲れさまでした!