高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

としまえん最後の日


さて、今日でついに豊島園が閉園になる。

 

昨年の6月に、たまたま撮影に行った場所だが、正直それまではあまり印象もなければ思い入れもない場所だった。

 

いや、はっきり言って、撮影後も別に「また足を運ぼう」などとは積極的に思ったわけでもなかった。

 

 


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しかし、閉園のニュースを耳にした時、思いのほか残念だと思う気持ちが強かった。

 

 


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たぶん、この遊園地のシンボルでもある回転木馬、カルーセルエルドラドの印象が、ずっと残っているからだと思う。

 

 


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昨年の撮影はホント思いつきで、しかも紫陽花の撮影をメインに据えていた時期だったこともあり、豊島園に赴いたのも、園内にある紫陽花を撮影するためだった。

 

 



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しかし、思い立ったはいいが当日は朝から土砂降り。「雨の中の紫陽花を撮る」というコンセプトに頭を切り替えはしたものの、やはり若干の躊躇というか、面倒くささを感じていたのも事実だ。

 

 


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そんな中で私の目の前に現れたのが、かの有名な回転木馬だった。

 

 


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周囲を庇で覆われた回転木馬は、撮影にはもってこいだった。しかしそれ以上に、その姿そのものに、見るなり魅了された。

 

 


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雨、というのも逆に味方したのか、しっとりとした空気感と周囲の緑、そして煌めく照明…子どもの頃にこれと出会っていたら、もっと素直な良い子として育ったかもしれない。夢のある世界の片鱗を、子どもの頃に体験していれば。

 

 

しかしまあ、私はすでに大人だったし、夢のある世界の裏側にこそ魅力を感じるような大人になってしまっていたしで、その後ふたたび豊島園に赴くことはなかった。

 

こうして豊島園最後の夕方に思い出すのは、カルーセルエルドラドを撮影していた時、スタッフの青年から写真を褒められたことだ。

ほとんど来園者もいない土砂降りの遊園地で、何十分にもわたって回転木馬を撮影していた私に、彼は声をかけた。

「どんな写真が撮れているんですか?」と。

 

私は素直に写真を見せた。

 

彼は私のカメラのディスプレイを覗くなり、感謝の言葉を口にしてくれた。

「こんなにキレイに撮ってもらえて、ここで働くスタッフとして凄く嬉しい」と。

 

写真を褒められて、私もとても嬉しかった。

 

最後に、その時の1枚を載せてお別れの言葉とする。お疲れさまでした。

 

 



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