高畑勲
昨夜、テレビ東京系の番組、「新美の巨人たち」のなかで、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」の特集をしていた。
この番組、美術系の作品のウラ話的なエピソードを拾ってきて、その作品の魅力を多角的に伝えてくれる優れた企画だが、昨夜の特集はまた、とても印象に残った。
写実的リアリスムを排し、日本画的な余白を使った、描かないことで描かれるリアル。
たしかに、緻密な描写で徹底的に書き込まれた作品の方が、評価される傾向にある。
そもそも、余白を残したアニメーションなんて、言われてみればあまり見たこともない。
文章でもそうだが、何度も推敲を重ねていくなかで、最初のうちはどんどん文字数が増えていく。書けば書くほど完成度は高まっていくような錯覚に陥ることも、よくある。
だけど何度も繰り返すうちに、やがて「削る」という作業に推移していく。最終的には初稿の文字数よりも2割から3割ぐらい減る。無駄のない文章を完成させるのも、やはりかなりの労力だ。
高畑監督はそれを8年の歳月をかけて完成させたそうだ。しかも、完成した時の言葉は「もっとやっていたい」…もうね、ヘンタイの領域ですな。
空を余白として扱っているので、あまり色を塗ることもなかった、というエピソードにも感銘を受けた。
もしかすると、写真を撮影するとき曇り空で空が真っ白というのは絶好の撮影日よりなのではないか…そんなことを感じた。
ドラマチックな空、鮮やかなブルー、そんな空ばかりを求めてしまいがちだが、あるいは真っ白な空にこそ、新たな可能性があるのかもしれない。
最近ではすっかり晴天続きだが、こんど曇り空を見かけたら、ちょっと撮影してみようかな。
そんなことを考えさせてくれた番組だった。