香水
香水とくれば、これはもうパトリック・ジュースキントの驚異の傑作書籍があるが、今日はフツーに香水のお話。
- 作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (160件) を見る
もうずいぶんと前になるが、香水を集めていた時期がある。別に、気分によって色々な香りを使い分ける、なんてカッコいいことをしていたわけではない。
自分の書いていた物語の登場人物に、それぞれ特徴のある香水を愛用してもらい、キャラ設定のひとつとして描きわけをしていたのだ。部屋中タイヘンなことになったのはいうまでもないが、ワタシ自身もタイヘンなことになった。
においだけではない。変なリアリティが加わったことで、物語の世界に没入しすぎた。
ある日、外出先から部屋に戻った際、とある女性キャラの残り香を感じた。
「なんだ、もう少し待っててくれたら良かったのに」
誰もいない部屋で、私はひとりつぶやいた。
そう、私はひとりつぶやいたのだ。
キケンではないか、この症状。
よく、役に入り込みすぎて日常生活に支障をきたす舞台役者の話を聞くが、あれと似たようなものだろう。
ふだん、あまりそういった影響は受けないタイプなので、ちょっと自分でビビった。
さすがにこれはマズイかも。
と思い、香水の使用をやめた。
と、そんな事件(?)があってから数年が経ったのだが、この夏、久々に興味をひかれる香水の情報が入った。
ヘプバーン愛用の香水として知られる名香の復刻版。
かつてジバンシィからこの香水を贈られた彼女が、「これはわたしだけの香りだから誰にも売ってはダメ」と、言ったとか言わなかったとか…とにかくランテルディ(禁止)と名づけられたこの香水の逸話は、何となくワタシにはしっくりきた。何となく、彼女なら冗談混じりにそんなことを言いそうな雰囲気がある。と、勝手に想像をふくらませている。
そんなこんなで長々と書き進めてきたが、先日、私はこの香水を購入した。
当時の香りに比べるとだいぶ薄い。とのレビューをいくつか目にしたが、いやいや、充分スバラシイ香りだ。それに、これぐらい控えめな方が、“妖精”が身にまとう香りにふさわしい。
ちなみに、今度は妄想に悩まされることはない。キチンと奥さまに差し上げたので。