高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

読書の秋

読書の秋、という言葉がある。

個人的には、なにもこんなに気候のいい時に本なんぞ読まなくても、とか思うこともある。

読書は夏か冬、外に出たくない時期に部屋に引き込もってするものだ。なんて考えたりもする。

とはいえ、秋が読書に適していないかといえば、そんなこともない。

で、それならば、というわけで、秋は外に出て本を読んでみようか、と考えた。


しかしこの時期、屋外での読書は意外とムズカシイ。日向で読んでいるとすぐに暑くなるし、かといって日陰に入るとすぐに寒くなる。

加えて、けっこう読書に適した時間は限られているのだ。日が傾き始めたな、と思ったらすぐに薄暗くなってしまう。


よって、秋の屋外で読書をするなら短編か、それに近い長さの物語を選ぶ必要がある。


サテ、そこからがまたムズカシイ。

せっかく屋外に出るのだから、季節を感じさせる1冊を選びたい。まさか真夏の恋の物語や冬の雪山での出来事、なんてモノが書かれた本を選ぶのも如何なものかと思う。もちろんヒトそれぞれ、気分で選べばいいのだろうが、出来れば秋の陽射しや木漏れ日なんてモノを感じられる1冊を選びたい。


ハテ、そんなモノ、あったっけ?


記憶を辿ってみる。

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

ああ、たしかに恒川さんは他の作品でもどこか秋の雰囲気のある文体で、いいかもしれない。でも、ちょっと暗いというか、せつなくなってしまうんだよなぁ。陽のひかりを感じるというよりは、もう太陽が沈む直前とかが似合う。


では、タイトルに「秋」となくても、雰囲気で秋を感じさせる書き手なら…。


薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)


えっと、余計に暗い。小川洋子さん、大好きだけど、たぶん読んだ瞬間から体感温度3度ぐらい下がる。
しかも情報が古いな。スイマセン、最近の本を読んでないので…。

やっぱり、意外とムズカシイな。
漱石さんの夢十夜? 
もっと古い。しかも、なんでワタシ暗いのばっかり選んでるんだ?


なにも国内にこだわることもないか。

雰囲気が秋で、あんまり暗くはなくて、でもちょっと切なくて…。

あぁ、けっきょくアレに辿り着くのか。

海の上のピアニスト

海の上のピアニスト


またまた古い。本が出たのはもう随分と昔。アレッサンドロ・バリッコ。「船の上のピアニスト」。

たぶん、私が初めて読んだイタリアの作家さんの物語。このあと、映画化されたりもして、その映画も大好きで、その中で使われている音楽も大好きで…。


海の上のピアニスト [DVD]

海の上のピアニスト [DVD]


秋に限定するのがもったいないぐらいの名作ではないか。

でも、映画の中でのひかりの感じとか、秋なんだよなぁ…別に季節は限定されていないんだけど。


なんだか「とっておき」を選びとってしまった。

しかし、映画は長いけど本はとても短い(本来、映画とは短い物語を映像化すべきモノだと思う)。ほとんどの場面は海の上だけど、まったく夏の雰囲気もない。秋の屋外で、ノンビリ楽しむには最適かもしれない。

さっそく天気のいい日にでも、読書の秋を満喫したいと思う。