高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

昨日の1枚

昨日のコンサートでの、撮影側の人間としてのオハナシ。

これまでも、奥さまのコンサートでは撮影をさせていただいていたのだが、以前は演奏中の撮影にはエラくためらいがあった。どうしても自分のシャッター音が気になってしまうのだ。ポピュラーなコンサートなどで大音量の演奏、さらに観客席も大歓声、となれば別に気にはならないのだろうが、クラシック系の演奏会となると、やはり客席は静まり返っている。そこで無神経にシャッターを切ると、どうしてもその音が響く。

 

え? ホントに大丈夫なの?

 

そう思うと、なかなかシャッターが切れない。

といって演奏と演奏の合間、客席が拍手で満たされている瞬間を狙おうと思っても、当然のことながらそれでは演奏シーンのカットにはならない。

 

なかなか撮影しづらい場所、それがコンサートでの撮影の印象だった。

 

しかし、だ。

 

去年、カメラを買い替えたのだ。

 

カメラマニアの方ならイザ知らず、そうそうカメラというものは買い替えるモノではない。使えるかぎり使う。それが基本だ。だから、以前のカメラを購入してから、すでに10年間、私は新しいカメラに触れてこなかった。

 

ハッキリ言って、隔世の感がある。

 

なんだ、このカンタン操作は?

 

これまで私が使っていたカメラは、正直あつかいの難しいカメラだった。10枚撮れば9枚は失敗。でも、残りの1枚で傑作が撮れる、そんなカメラだった。そんなあつかい難い点がとても気に入っていた。実際、上手く撮れた作品は自分で言うのもなんだが、まさに傑作と呼ぶに相応しい1枚に仕上がったものだ。しかし…

 

アレ? 傑作、カンタンに撮れる…

 

すごいね、新しいカメラは。

 

まず、何より撮りやすい。暗い場所でもぜんぜん余裕だし、なによりディスプレイ上で見ている画像のままに撮影できるから、わざわざ撮影後に明るさ等を確認して撮りなおす必要もない。カンタン。

 

そして何より、シャッターの音を完全に消し去ることができる。

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1/300 F2.8 -1/3 ISO3200

 

いちおう私の使用カメラは富士フイルムのX-T2であるとだけは言っておくが、別に覚える必要はない。1点だけ必要な情報としてお伝えしておくなら、それはミラーレス一眼カメラである、ということぐらいだ。

 

むかしのカメラでも上位機種ともなれば消音機能はあったものの、どうしても一眼レフはミラーの上がる音が聞こえてしまう。舞台やコンサート等での撮影の際は、カメラをタオルでぐるぐる巻きに包んでなるべく音がしないようにする、なんていう配慮も必要だった。

しかし、今やカメラの潮流はミラーレス一眼へ。

ミラーレス…つまり、カメラの内部に鏡が入っていない、ということ。

それはカメラの重量を軽くするというほかに、シャッター音を消すというメリットをもたらした。

 

いやはや、これが便利なのだ。

 

先日のミュージックスクールの発表会も昨日のコンサートも、これほどまでに遠慮なく撮影できたのは初めてだった。すげー楽しかった。

 

そうそう、これだよコレ。

 

何度もそう思った。スバラシイ。実にスバラシイ。

 

もちろん、欠点だってある。バッテリーの減りが早すぎるとか、ディスプレイの画面で被写体を見続けることになるので目が疲れるとか、そういった点はまだまだ改良の余地はある。だけど今のこの流れは変えられないだろう。

 

かつてのフィルムカメラに触れたことのないユーザーが大勢いる現在、同じくデジタル一眼レフに触れたことのないユーザーも増えていくだろう。そのうちミラーレス一眼だって過去のモノとなっていくに違いない。技術の進化は本当にスバラシイ。

 

 

だけどね。

 

だからこそ、カメラを扱う側の人間として、忘れたくない。

 

撮るのは人間だよ。

 

どんなにカメラが進化しようとも過去の傑作が色あせることはないし、そんなことで色あせるような作品は傑作とはよばない。どんなに画質が悪くても、良いものは良い。そんな写真を撮り続けたいものである。

 

と、最後はわりと真面目に締めくくらせていただこう。

 

それでは、また。