ホラー
今日、窓の外に、お爺さんが張りついていた…
おいおい、なんて衝撃的な1文なんだろう…
今日、窓の外に、お爺さんが張りついていた…
これだけで、いくつも短編ホラーが書けちまうんじゃないかってネタだ。
しかし、本当のことなのだ。
今日、窓の外に、お爺さんが張りついていた。
そう、いつものように私は不動産物件の撮影のため、とある戸建物件に足を踏み入れた。玄関の鍵を開けて、まず最初にやることは、雨戸を開けること、そしてブレーカーを上げること。
いつものことだ。別に、特別なことなど何もしていない。まず、リビングの雨戸を開た。それから洗面所に行ってブレーカーを上げた。で、リビングに戻ってきた。そしたら、
窓の外に、お爺さんが張りついていたのだ。
うわ、やべー
スゲー怖いんですけど…
窓にね、顔と両手を押しつけて、部屋の中を覗き込んでた。
どうすんだ、これ?
もはやシャイニングの世界。
すぐに窓に近づくのは怖すぎる。
かといって、そのまま気づかないフリで押し通すわけにもいかない。なにしろ、けっきょく私は外に出なければならないのだから。
とりあえず、平静を装いつつ、部屋を撮影。
「私はカメラマンですよ。私は怪しいものではありませんよ。怪しいのはあなたですよ」という、無言のメッセージである。
お爺さん、相変わらず窓に顔を押しつけたまま。
それでも、私の存在をキチンと認識した様子はうかがえた。
ヨシ、近づくよりない。
素早く、もしもの時のための退路を確認。窓を開けた瞬間わっと押し込んでこられたら、玄関からサッサと逃げればいい。
いざ!
…はい、結論からいってしまえば、お爺さん、怪しいひとではありませんでした。
なんでも、以前この家を建てていた業者さんのひとり、とのことだ。数週間前に怪我をして引退。今日は様子を見に来たのだ、と…
窓に張りついていたのは、たんに中に知り合いがいないか探していたらしい。
まぁね、それでもやっぱり怖いし、怪しいっていや怪しいよね。あんまり深くはかかわらない方がいい。とりあえず、テキトーに話を聞きつつ、速やかに窓を施錠。ついでに、普段は鍵はかけていない玄関の鍵も施錠。撮影を終えて物件を出る時は、かなり慎重に扉を開けた。
いやはや、今日はそれが1件目。もうすでにくたびれた。
はい、残りは惰性で乗り切りました。
疲れたから、今日はさっさとシャワー浴びてワイン飲んで寝る。
それでは皆さま、お疲れさまでした!