高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

梅雨寒

昨日はけっこうな梅雨寒でしたな。

 

寒いくせに動くと暑いっていう、なんとも厄介な感じがいかにも梅雨っぽいが、こんな天気の日は、部屋でこころ穏やかにワインでも飲んでぶっ倒れたいものです。なんてことを考えていた。

 

まぁ、別に「こんな日」じゃなくてもよくぶっ倒れているが…。

 

 

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン (エクス・リブリス)

 

 

肌寒い日にワインが呑みたいと思うと、どういうわけかほぼ確実にこの本を思い出す。

 

まぁ、どういうわけかもなにも、酔っぱらいのアル中オトコの転落人生譚という、親近感湧きまくりの作品だったがゆえに、私の中に深く刻まれているのである。

 

しかも恐ろしいことに、歳を経るごとに、その親近感は増していくのだった。

 

おっと。

 

大丈夫なのか、私?

 

 

 

しかしね、この作品、ホントよく出来ているのさ。冒頭に人生崖っぷちの主人公を登場させたかと思うと、次の章からは時間を遡って過去のエピソードを綴っていく。そう、破滅に至る経緯が徐々に明らかになっていく構成だ。

 

目新しいかどうかではなく、その質そのものの高さを、もっと評価して欲しい作品だ。

 

 

著者のポール・トーディは、デビュー作の「イエメンで鮭釣りを」がわりと有名。「砂漠でサーモン・フィッシング」のタイトルで映画化もされた。ユアン・マクレガーとか出ていたわりには、日本ではあまり話題にならなかったようにも思うけど…。

 

 

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス)

イエメンで鮭釣りを (エクス・リブリス)

 

 

だんだんハナシの収拾がつかなくなってきた。そもそも、なんのハナシだったか…

 

 

あぁ、肌寒い日にはワインだよね、と。

 

うん、数年前、とある寒い日の午後に、私は「ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン」を部屋で読みながら、ワインを飲んでぶっ倒れた。その記憶が強い。

 

食やお酒にまつわる物語を読みながら、それと同じものを実際に口にする…なんとなく、贅沢な時間だと思わないだろうか? 破滅の物語を読みながら一緒に破滅することが、贅沢かどうかはともかくとして。

 

 

そんなこと、よくやっていたよなぁ…なんてことを思う梅雨の晴れ間、なんだかんだと暑い午後であった。