高北謙一郎の「物語の種」

読み物としてお楽しみいただけるブログを目指して日々更新中。

ショートショートロードムービー的物語

 

style.nikkei.com

 

突然だが、最近ネットニュースの中に紛れていた記事が、個人的に気に入っている。

 

はい、今日はスタジオとは全然関係ないお話。

出世ナビとか、私には全然関係ないお話。とも言えるけど。

 

 

元タクシー運転手にして鉛筆画家、そして穏やかな語り口が心地よいリズムを生み出す文筆家、という異色のオジイサマの特集記事だ。

 

彼の鉛筆による1枚の絵と、タクシードライバーだったころのちょっとしたエピソードが綴られたこの記事に、何だかミョーに惹かれる。

 

なんだろう、最初に1枚の絵が載っているからか、その後に続く文章の視覚的イメージが広がりやすい。まるで、自分がタクシーの運転席に座って彼の語るエピソードを追体験しているようなのだ。目的地のないショートショートロードムービーといった感じ。

 

 

古めかしくどこか畏まった語り口も印象的だ。カズオ・イシグロ氏の『日の名残り』とか、ちょっと思い出す。もちろん、あそこまでの傑作とは言わないけど。

 

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

でも、長篇だと少しくたびれてしまいそうな堅苦しさも、短い物語だと心地よく感じる。都内で飲んだ帰りとか、ワンメーターぐらい乗ってみようかな。そんな気にさせる記事であった。

 

それにしても、肝腎のオジイサマのお名前が思い出せない。まぁ、そんな匿名性もタクシー運転手っぽくて良い。